大学からの帰り道に、ふと思い立ち、あの駅のあの場所に向かう。
 あの時以来、あの場所に行くのは初めてだ。
 近くに寄ったときでも、極力あの場所には近寄らないようにしていたから。
 程なく、私はその場所に到着した。
 電車が出たばかりのせいか、その場所――あのベンチには誰も座っていなかった。
 私は誰も座っていないベンチをじっと見つめる。
 あの冬の日。私と約束したはずの彼女は、この場所にやってこなかった。
 ここは、栞と私が引き裂かれた場所で、私の前からあなたが消えた場所。
 もう、この場所には来ないと、あの時の私は誓っていた。
 それが今では、あのベンチを感慨深く眺めているのだから、私も成長しているのかもしれない。
 良くも悪くも、いばらの森で閉じこもっていた女の子はもういない。
 私は携帯電話を取り出し、パシャリと誰もいないベンチの写真を撮った。
 それからしばらく考えて、私はその写真を蓉子に送りつけた。
 この写真の意図がわかるにしろ、わからないにしろ、彼女なら必ず連絡をくれるはずだ。
 連絡が来たら、彼女に言うのだ。
「ねえ、蓉子。栞の連絡先教えて」って。
FIN
あとがき
最近はSSはイベントの時にしか書いていません。
マリアさまも離れて久しいですね。
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2016/03/17(萌0 笑:0 感:7)