「ねーねー、真琴姉ちゃん」
「あぅ? 何ー?」
「お星様ってなーに?」











「で、答えられなかったって訳か」
「違うわよ〜! また今度教えるって言ったんだってば!」
「変わらねーよ」


一つの部屋の中で祐一と真琴がいた。
祐一は机の椅子の上で、真琴はベッドに座っている。


「星ね〜」
「相手が子供なんだもん。説明が難しいの」


落胆の表情でため息をつく。
それに祐一もつられてため息をついた。


「俺も明日は講義無くて完全フリーだし、見に行くか?」
「何を?」
「星に決まってんだろ」















Guardian

















「ほら、早く乗れ」
「はーい」


見送りとして二人ほどの姿を背にして車は走り出す。
さほど住宅地が多くない町並みはすぐに途切れ、木々が立ち並ぶ景色へと姿を変えた。


「ねえ祐一。後ろの物は?」


運転席にいる彼は、ああと言って話し始める。











「秋子さん、天体望遠鏡とかってありますか?」
「望遠鏡ですか?」
「あ、無いなら無いでも良いんですけど」
「……多分、外の倉庫の中にあるかもしれません」











「と言うわけで持ってきた」
「ふ〜ん……」


真琴は興味津々で後ろを見る。
相当気になっている様子だ。


「大人しく待ってろって。どうせそれ使って星を見るんだから」
「分かってるけど〜」


そう言う彼女に対して、祐一は車のCDプレーヤーにCDを入れていた。


「やっぱ天体観測するんだったら、この曲ははずせないだろ」
「そうなの?」
「サビを聞けば分かる」
「ふーん……」


そして車は高速へと乗り入れる。
その中、段々と真琴のあくびが増えてきた。


「眠ってても良いぞ? 未だ少し遠いしな」
「どこまで行くのよ〜?」
「ま、気にすんな」


そして、程なくすると彼女は眠りに落ちる。


「ま、天体観測だから必然的に帰りは遅くなるんだよな」


彼はハンドルを片手に、CDの音を止めた。



















「ほら真琴。起きろ」
「ふぁ……?」


寝ぼけ眼の彼女は車から降り、周りをキョロキョロと見回した。


「どこ?」
「公園みたいな所」


彼は望遠鏡を持って、公園のような所へ入っていく。


「ま、待ちなさいよ!」


町の光はほとんど無く、備え付けのライトだけが灯る。
ボンヤリとしたその光は、余計に周りを暗く感じさせた。


「ね、ねぇ。祐一……どこまで行くの?」
「ん〜……『星降る丘(プラネタリアス)』って所」
「プラネタリアス?」


真琴が聞き返すと、祐一は後ろからでも分かるくらいに肩をすくめた。


「俗称らしいけど、そう呼ばれるところがあるんだとさ」
「へぇ〜」


そしてまた、少し歩いたところで祐一は止まった。


「……どうしたの?」
「いや……どうやらここが“そう”らしい」
「え?」


彼女は反射的に空を見た。
そこには広大な空と、幾万ともつかない星々の灯り。


「『星降る丘』か。あながち嘘じゃないな」


彼は望遠鏡を降ろして設置した。
真琴の方は未だにその光景に見とれてこっちに戻ってこない。


「おい真琴。準備できたぞ〜」
「え!? あ、うん」


慌てて祐一の側に座る。
望遠鏡を覗いていた祐一は色々と調節している。


「結構本格的な奴だから、よく見えるな」


ほら、と彼は真琴に覗かせた


「へえ〜、これが星なんだ。小さいわね〜」
「そりゃ距離が離れてるからだろ……」


呆れたような表情の祐一。
大きい星を探すかのように、真琴は望遠鏡を上下左右に動かしてみた。


「あぅ?」
「どうした?」
「赤い星が見える……」


祐一が真琴をどけて望遠鏡を覗き込んだ。


「ん〜……火星かな?」
「火星?」
「多分な」


再び真琴が覗く。
興味を持ったのか、食い入るように見ている。


「そうだ。星にまつわる神話ってのもあるんだ」
「そうなの?」
「ああ。ギリシャ神話で水星はマーキュリーとか、金星はヴィーナスとかな」
「ふ〜ん……他は?」
「十二星座の神話もそれなりに知ってるが、まあメインは九惑星の神話だな」


いつの間にか真琴は彼の方をずっと見つめている。
それも興味津々な様子で。


「火星もあるの?」
「ああ。火星はマーズって言って、軍神になる」
「ぐんしん?」
「戦いの神だよ」
「そうなんだ〜……じゃあ、祐一は火星ね!」
「は?」


ニコッと笑って、彼に抱きついた。


「真琴をずっと守るんだから、それくらいじゃないと!」


真琴の発言に彼はあっけにとられた表情をする。
そして、不意に笑うと。


「そうかもな」


と言って、草の上に寝ころんだ。
見上げる空には光り輝く星々の姿がある。


「ねぇ、祐一……」
「ん?」
「知られてないんだろうけど、この星全部に神様って居るのかもね」
「そうだな……そうかもしれない」


祐一は真琴の髪を梳く。
本格的に保母の仕事を始めてからは、普通のロングにしてきた髪。
手に引っかかることもない。


「そういや、いつまでこうしてる?」
「え?」
「このままだと結構遅くなりそうだな……」
「も〜、祐一はムード無いんだから〜」


真琴は、軽く祐一を叩いた。



















「ねーねー、真琴姉ちゃん。お星様って何〜?」
「お星様はね〜、神様なの」
「かみさま?」
「うん。私たちを見守ってくれてるいっぱい居る神様なのよ」
「じゃあ、わたしも見守ってくれてるかな?」
「当たり前よ」


子供が嬉しそうに真琴から走って離れていく。
多分、友達に教えるのだろう。


「真琴ちゃん、良い教え方ね」
「この前、真琴の火星と見に行って気付いたんです」
「火星?」


その言葉を聞いて彼女は悪戯っぽく笑った。


「秘密です」




火星(ゆういち)は、いつも真琴を見守ってくれる軍神(Guardian)だもん




首を捻るその保母に対し、真琴はまた子供達の所へと歩いていった。




Fin





後書き

あー……疲れました。これが恐らく自分のPCで書ける最後のPS4です。

ま、この後でも書いてるような気がしますが。(汗




ところでGuardianって言うのは要するに守護者のこと。

「火星=軍神=戦う人=守護者」とか言う屈折があったので、こうなりました。

時間設定としては祐一が大学三年で、真琴が本格的に保母として働き始めた辺りでしょうか。

なんで、口調を多少大人っぽくしたんですが……真琴が誰かよく判らなくなったかも。(笑




あと、余談ですが。

この作品に至るまでに2回(3回かも)ほど没があったりします。

中には香里の奴もあったりしたなぁ……全員出演だったけど。(汗

機会があったら、書いてみようかとも思います。




と言うわけで第六回ご苦労様です。

まだ後にも頑張る所(次回サイト探し)があるので、頑張ってください。

余談ですが、お題が天体だったら月でもっとロマンチックに書けたかもー? と思ってます。

今更遅いですねー(笑




ついで。

前回ネタが入ってませんでしたので、今回は軽く入ってます。

ヒントは「見えない物を見ようとして、望遠鏡を覗き込んだ」でしょうか。

丸わかり(笑


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